ShibaDog

自動車メーカーエンジニアのブログ

モビリティの電動化は本当に「先進的」なのか?

ShibaDogです.

 

去年のモーターショーに行った人たちは感じられたかと思いますが,これからの車は車のようで車でないくらい先進的になるだろう,と感じたと思います.

 

自動車メーカー、電動化と自動運転の行方 - 日経テクノロジーオンライン

 

上の記事の通り,各自動車メーカーがこぞって,電動化や自動運転やAI搭載など未来感溢れたプレゼンを行っていました.

 

個人的にはこういう話は大好きなのでとっても興味がありますが,あの未来感は実際的にはあと何年先の話なんだろうと思っています.

 

で,今回書きたいのは電動化について.

 

時代背景

ざっくり説明すると,下の記事に簡潔に書いてありますが,

英国とフランスの両政府は7月に、ガソリン車とディーゼル車の国内販売を40年までに禁止する方針を表明。成長著しいインドでも、30年までに国内で販売されるすべての自動車をEVのみとする政策を打ち出している。充電ステーションの整備や電力供給など実現に向けた課題はあるものの、「脱化石燃料車」により大気汚染問題の解決や温室効果ガス削減につなげる狙いだ。

また中国では完成車メーカーは、早ければ18年にもEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など電動車の一定割合の販売が義務づけられるほか、米国カリフォルニア州では排ガスゼロの環境車からHVが今後除外される。

自動車の電動化が急加速−EV戦略転換、強まる環境規制に対応 | 自動車・輸送機 ニュース | 日刊工業新聞 電子版

 すっかり電動化は正義で内燃機関車は悪,みたいな風潮です.

 

じゃあ実際にどれだけ内燃機関車がCO2を排出しているかというと,

環境:運輸部門における二酸化炭素排出量 - 国土交通省

 

データは国内だけですが,自家用は運輸部門の60%程度なのでおよそ10%,結構多い.現状ほとんどの車が1次エネルギである化石燃料を使用しているので,CO2と合わせて大気汚染物質(NOx,PMetc)をエンドユーザーが排出しています.

 

要因はこれだけではなく,再生可能エネルギの積極活用,各国のCO2排出量低減目標,化石燃料の輸入リスクのような政治的背景もあり,電動化を推し進める直接的な要因は絞り切れませんが,なんとなく時代の方向性としてはしょうがないのかな,と感じます.

 

しかし電動化は本当に先進的と言えるのでしょうか?

 

電動化のメリット

まずだいたい考えるのがランニングコストについて.走行するのにかかる化石燃料と電気代のランニングコストですが,年間1万km程度でもかなりのコスト差がでますが,現状の電気自動車の車体の購入額は到底ペイできません(算出しているメディアが沢山あるので省略).

 

次に航続距離については,テスラモデル3がアメリカの燃費測定基準において相当距離を伸ばしてきています.ここについては昔よりはだいぶ進化してきていますが,やはり未だ化石燃料のエネルギ密度には敵いません.

 

で個人的なメリットとして高いと思っているのが,電気をエネルギ源とすることで,内燃機関車のような排気ガスを排出することはないので,いわゆるゼロエミッションで走行することができます.ユーザー目線ではよっぽど環境意識が高くなければそこまで価値はありませんが,内燃機関車の欠点である加速時のCO2や汚染物質などの排ガス増加がキャンセルできます.

 

簡単に説明すると各ユーザーが様々な加速度で加速する為,エンジンに必要な色々な制御が時間軸に対して後手に回ってしまうので,最適な制御が出来ないことが原因です(技術進化は当然進んでいますが).

 

一方電気自動車*1は電力消費量が変化するだけなので,電費の悪化のみが悪化するだけにとどまります.

 

あとは室内の静粛性の良さや,モータの加速性能は性能の良いエンジン(排気量であったり過給機搭載)に対して費用対効果が大きいです.

 

ここはユーザーの体感に直結するので価値は大きいと思います.

 

大きな特徴としては挙げた4点程度になると思いますが,しかし個人的にはエンドユーザーにとってそこまで大きな利点にはならないと思います.

 

結局のところ内燃機関車の動力源の代替え手段でしかありません.

 

エネルギ供給のリスク

でここからは推測です.経済面に直結する電気代のランニングコストですが,現状の電気代や日産が提供している給電の月定額制程度の金額であれば,ある程度のメリットが出ますが,電気自動車が普及してくれば必ず電力需要が増えるので,電力会社の必要発電量が増える,現状日本は火力発電に偏っているので必要な化石燃料が増える,そもそも現状の発電所だけで増えた電力需要を(再生可能エネルギーも駆使して)どうカバーするのか,といった問題が出てきます.

 

なので仮に需要増加に伴い電気代が上がれば,経済的なメリットが相殺される可能性が出てきます.電力会社といった中央管理されているところから供給を受けている以上,そういったリスクは避けきれません.

 

なので,そういったデメリットも踏まえて電気自動車に未来を感じなければいけないと個人的には考えています.

 

ただ間違ってもらいたくないのは,別に電気自動車は必要じゃないと言っているわけではありません.乗った経験がある人は知っていると思いますが,あの静粛性や加速性能は内燃機関車を圧倒していると思います.

 

ここまで言っておきながら次の車は電気自動車にしたい笑.

 

そして,これはマイホームを持っていないと厳しいですが,太陽光発電によってユーザーが自己発電した電力を使用することで,太陽光システムの初期投資を無視すると,電気代ゼロにすることも可能です.

 

下のように蓄電池を駆使することで電力会社からの電力供給に頼ることが無くなれば,電気代増加のリスクは回避できます.

 

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について|省エネルギーについて|資源エネルギー庁

 

ただやはりこれも初期投資がかかるので,プラマイゼロが関の山なのかもしれません.

 

 

かなり主観的になりました.が,電気自動車は一見先進的に見えますが,動力源の代替え手段でしかないのと,エネルギ種は変われど中央管理されている以上,供給のリスクはついて回るので,そこを踏まえて検討する必要があると考えています.