逆境の内燃機関車.
ShibaDogです.
ディーゼル車の市場が縮小
先日Toyotaが欧州のディーゼル車販売を終了すると報じられました.ほんの数年前まで欧州ではガソリン車よりCO2排出の少ないディーゼル車が欧州全体で多くの割合を占めていましたが,すっかり逆境となっています.
問題はいくつかあって,燃費基準(CAFE)の強化,VWの排出ガス偽装,排出ガス規制強化に対する後処理装置のコストアップ,欧州各国の内燃車乗り入れ禁止,それらから来る昨今の電動化,が要因だと思います.
燃費基準の強化
まず燃費基準の強化ですが,下のリンクを見てもらう通り,欧州ではCAFEという規制があり,各メーカー毎に燃費の目標値が課させていて,販売した車両の総平均燃費が目標に達しなければなりません.
達成できなければペナルティとして違反金を支払う羽目になります.例えばEV等のゼロ排出車を販売したとしても,台数が売れなければカウントされない為,ある程度燃費が良くてコストが低く売れてくれる車種のラインナップが必要になります.
CO2排出95gというのはkm/L換算で24.4km/L(NEDCモード)なので,ハイブリット並みの燃費が必要だということです.(JC08モードではもっと高い値になる)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/pdf/006_02_00.pdf
最近,Hondaが欧州で発表した新型Civicディーゼルの燃費が99g(WLTP新燃費計測モードの値?),27km/Lなので,この規制の高さが十分に伝わると思います.
排気ガス規制の強化
次に排出ガス規制についてですが,VWが起こした問題を簡単に説明すると排ガス計測時に専用制御により燃焼制御を変更しNOx排出を計測時のみ低減させてるいったかなり悪質な手法ですが,ディーゼル車はガソリン車と違い,自己着火可能な範囲で空燃比を広く取れること,高圧縮比により熱効率が高く燃費が良いわけですが,高空燃比と高い圧縮比により燃焼温度が高いためNOxの排出が多く,燃費は良いが後処理にコストがかかるのが特徴です.
MazdaがSkyactive-dieselを初めて出した際,燃焼設定を主流であった高圧縮比をやめ,後処理のコストを大幅に下げるという技術で世に送り出しましたが,それは燃費と出力をある程度犠牲にした結果であり,結局のところ燃費と排ガスはトレードオフが大きな課題です.
また最近また報じられていますが,主要都市に対する乗り入れ自体をも禁止する事の議論がかなり現実味を帯びてきています.
これは買い替えを促進させることが目的なはずです.
直接的に国民に所有禁止というやり方は現実的で無いので,年代の古い車を長期間所有し使用され続けると,年次の燃費基準をそれだけ厳しくしていこうと,全体としての排出ガス低減に時間がかかるわけですが,こうやって都市への乗り入れ規制をすることで,「日常の利便性が下がる」とユーザに感じさせる事で買い替えさせやすくするといった狙いが含まれているはずです.
こういった規制強化の流れから,熱効率を上げたり,後処理装置や燃焼制御などの技術進化からこのトレードオフラインを改善する事は可能ですが,それに合わせてハードにかかるコストが上乗せされていき,結局はエンドユーザに返ってくるので,初期投資とランニングコストをハイブリット車等と並べてみると,その差が相当縮まっていくはずです.
当然商品性的な話もありますので,一概にコストアップが製品全体の魅力を押し下げるとは思いませんが,コストという経済的な面は購入時のテーブルに大きな割合を占めているのは明白なので,特に車にそこまでのこだわりが無ければ,コスト差と言うのはかなり痛いのかもしれません.
内燃機関にとっては厳しい時代
特に目新しい内容ではありませんでしたが,こういった製品開発に携わっている以上,各メーカーの内燃機関車動向がすっかり撤退や廃止となっている以上,多少悲観的になってしまいます.
といってもMazda Skyactive-XのHCCI投入がどうなっていくのかが,大きな話題として残っているので,そこに期待感を残して注目していたいところです.