Mazda CX-8 新型SKYACTIVE-D は,日本が持っているディーゼルエンジンへのイメージを変えたのか?
ShibaDogです.
CX-8めっちゃ売れてるなー,日本じゃハイブリット全盛だしディーゼルのイメージ悪いのに凄い.CX-8が良いのかディーゼル一本仕様だからなのか,少なくても買った人はディーゼルでも許容範囲なんだろう.https://t.co/OxJylwhJ9l @YahooNewsTopics
ガソリン仕様があればそっちにしたのだろうか.
出だし好調みたいですね,だいたいは出だしは好調なので時間がたてばある程度落ち着いていくとは思いますが,僕の周りでも話題になっていたり,実際に購入している人もいて,なかなか注目度は高いのだろうと感じます.
3列シートSUV,どうなんだろう,これから流行っていくのだろうか?世の中の大多数が結婚して子供が生まれたらミニバン一択みたいな世間からの結婚相手からの同調圧力的なものから解放されるのか(言ってる自分も自ら進んでHondaエリシオンプレステージに乗っていた).
んな話はどーでもよくて,CX-8ですね.
エクステリア/インテリアデザイン
まずエクステリアデザインですけど,普通に格好いいです.僕自身はデザインとか詳しくないので超感覚個人的趣向ですけど,良いものは良いです,凄く格好良い.
ちょっと前にMazdaディーゼルを買いたいなと思い,当時出たばかりのCX-3を一目見たとき,「めちゃくちゃ格好良いじゃないか」と思いました.CX-5も嫌いじゃないんですけど,ちょっとフロント周りが幼顔という感じがして惜しいなと思っていたので,CX-3はそれはもう完璧でした.Honda Vezelなんかより全然イケてる.あくまで個人的趣向です.
たぶんCX-8(新型CX-5も)はそのデザイン指向を継承しているように見えるので,同じように格好良いと感じる,言い換えればほぼ同じ笑.
次にインテリアは,特に奇抜な装飾もなく特異なインフォメーションディスプレイも無く質素というかシンプルで良いです,どことなくAudiに似ているような.どこを見れば欲しい情報があるかが分かりやすそう.これって結構重要だと思っていて,運転中って基本前方に視線を向けつつインフォメーションに視線移動すると思うんですけど,これの視線移動が煩雑だと結構しんどい(所謂UI/UX的な).なので視線移動回数が少ないというか,移動させる場所が少ない方が良いと良いと思っているんですけど,例えばToyota ノア系のインフォメーション周りは個人的には好きじゃない.一見普通そうですけど,何が嫌いってエアコン調整ボタンは下方にあるのに,設定インフォは上方の小ディスプレイにある.良いじゃんボタン付近にあれば!どうせ調整ボタン押すとき一度チラ見するんだから!ボタン場所確認-ボタンを押す-上方ディスプレイ確認,実際乗って操作してそう感じました,真面目に運転中エアコン操作を面倒すぎて諦めました.イライラしてくるからまあ良いや,とにかくCX-8のインフォメーション周りは視線移動が楽そう.
で,エクステリアとインテリアの話をしたいんじゃなくて,搭載しているパワートレインについて.
搭載パワートレインはディーゼルのみ
なんと,2.2Lディーゼル仕様のみ,いくらなんでも男前過ぎないか?もしかしたらこれからパワートレイン仕様が増えるのかもしれないけど,ちょっと個人的にはかなり衝撃的.だって日本はすっかりハイブリット先進国,ディーゼルエンジンなんて今だに一般的にはトラックなの?だし,最近ではNissanエクストレイルとMazda CX-3 / 5がありますけど,やっぱりニッチ層にしか受けないという印象,…と思っていたら,旧型CX-5は販売比率の70%は2.2Lディーゼルだと,マジすか.
ディーゼルエンジンのネガポジについてもうかなり一般的ですが簡単に書くと,
ディーゼル車のデメリット
— ShibaDog@HondaR&Dエンジニア (@ShibaDog67) 2018年3月24日
・ノイズと振動が(体感でしんどいくらい)大きい
・DPF再生という謎の処理が必要
・ガソリン仕様車より車体価格が高くなる傾向
大きく重い車に相性が良く,ランニングコストはガソリンエンジンに比べて安上がり.
しかしながら,燃焼あたりの熱発生が高い=取り出せるエネルギが高い一方で,エンジンから放出する揺れと感じる振動や音として感じる振動も大きいわけで,これが商品性に影響を及ぼすことと,それらを対策したり,あとは以前も書きましたが後処理装置などの付帯コストからエンジン/車体自体の原価が高く,車体価格はガソリンより高い,価格差のイメージはハイブリッド車くらいのイメージだと思いますが,ポジティブにあげたランニングコストを頑張ってもペイできるかどうかの瀬戸際です.燃料代は変動要因なのでなんとも言えませんが,経済的コスト上ではどちらかが優位とういことはほぼ無い.
主な適用技術
で今回搭載したSKYACTIVE–Dマイナーチェンジを行なっています,少しだけ説明すると,
・燃焼室形状を変更し燃焼を改善
・従来の2ステージターボの1つを可変タービンにし,排ガスエネルギーを回収できる領域を拡大し,過給能力を向上
まず燃焼室ですが,先代モデルからエッグシェイプという形状を考案し適用されています.しかも発明表彰までされていますね.
https://autoprove.net/mazda/24761/
今回のマイナーチェンジで更にピストン表層部へ段付き形状を追加しています.リンク先にもあるようにこれは燃焼ガスの冷却損失を低減する内容で,知っての通りですが,燃焼ガスはとても高温ですが周囲のピストンやスリーブ部は部品耐久性から冷却水やオイルによって冷却されている為,その温度差によって熱エネルギが移動してしまうわけですが,この段付き形状利用し燃焼したガスの流れを制御しスリーブ壁面への積極的なガス接触を防ぎ熱エネルギ移動=冷却損失を低減しています.冷却損失低減といえばトヨタの遮熱技術がありますが,この段付きピストンはその前段で損失を低減するといったアプローチです.
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次に可変タービン2ステージターボですが,ツインターボとの違いですが,異なる流量レンジのタービンを直列に接続し,一つでは回収しきれなかった排ガスエネルギをもう一つのタービンで再度回収する(多段タービン)事,また異なる流量レンジを2つ持つことで低回転から高回転まで過給域を広げられるわけです.
分かりやすい?SKYACTIV-D 技術解説 | Mazda Fan Community - マツダ・ファン・コミュニティ
旧型SKYACTIVE-Dの2ステージターボは2つの固定タービンを採用していますが,低回転トルクと高回転出力域を広げるべく流量レンジを決定すると,中間域でうまく流量を調整できない領域が発生してしまうので,それとのトレードオフにあります.そこで今回大きい側へ可変タービンを適用することにより,流量域を可変タービンによって広く調整できる為,そのトレードオフを改善することが可能となり,過給能力を改善させられるわけです.この2ステージターボの作動原理ですが,三菱重工の技術論文に分かりやすい説明があります.
http://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/474/474007.pdf
その恩恵から旧モデルに対して最大トルク/出力が向上している.
最高出力と最大トルクを向上しながら燃費性能や静粛性も同時に実現する改良を施したSKYACTIV-D 2.2を採用した。最高出力は従来の129kWから140kWに、最大トルクは420Nmから450Nmに改善している。
マツダ新型SUV「CX-8」、導入以来最大の改良を受けた「SKYACTIV-D」を搭載 - MONOist(モノイスト)
ハイブリッドや電動化にシフトする日本で,CX-8がディーゼルエンジンを正しく認知させることができるのか?
そのネガポジから正直CX-8のディーゼル一本足が懐疑的だったんだけど,週末BMW218Dを会社から借りてきて乗っていたのだけど,車室内の音や振動は確かにガソリンより悪いかもしれないけど,そこまでじゃ無いと体感的に感じて.
— ShibaDog@HondaR&Dエンジニア (@ShibaDog67) 2018年3月25日
で,ガソリン仕様があればそっちを選択するのかもしれないけど,たぶんエンドユーザー的には経済的に商品性的に損しなければどっちでも良いや,という印象を持っているのかもしれない,実際に旧モデルのCX-5は70%はディーゼル仕様だという.
— ShibaDog@HondaR&Dエンジニア (@ShibaDog67) 2018年3月25日
そういう意味では別にMazda以外の電動化戦略も間違いじゃないけど,現時点での内燃機関ベース戦略はMazdaの圧倒的勝利.日本が抱えていたディーゼルへのイメージを無くしてしまったと言えるのでは?
— ShibaDog@HondaR&Dエンジニア (@ShibaDog67) 2018年3月25日
すっかり電動化が騒がれていて,それに期待をする声が多い中で,正直ディーゼルエンジンが普及する事は難しいと思います.ただ,ディーゼルエンジンを搭載したCX-8が好調に売れていることを見ると,ディーゼルエンジンのネガな部分を無くしてしまうくらいCX-8に魅力がある,もしくはそれを許容範囲とするくらい動力に対して求める要求が今のユーザーにはあまり無いのか,はたまた新型SKYACTIVE-Dはガソリンエンジンと遜色無いレベルまで到達したのか.
という事でMazdaというメーカーは電動化への過渡期である今このタイミングで最高の仕事をしていると考えます.
いずれにしても結果だけをみれば,Mazdaの内燃機関戦略は大当たり.このタイミングで1番良い仕事をしているのはMazdaでは無いかと考えます.